PdM実務からの学び:認識を揃えるためにまず言葉を揃える

こんにちは、「tebiki現場分析」のプロダクトマネージャーをしている笠野です。

「tebiki現場分析」とは、デスクを持たない現場(主に製造業)に対し、業務のデジタル化と可視化、分析を通じた改善サイクルの実現を目指すプロダクトです。

この記事では、機能開発を進めるなかで、PdMとして「2種類の用語を目的に応じて使い分けることの大切さ」に気づいた経験を紹介します。

プロジェクトの認識統一に悩む誰か(将来の自分も含む)の参考になれば幸いです。

1. 認識を揃えるために必要な「共通の用語」

機能開発を進めるうえで、関係者との認識を揃えることは欠かせません。

そのための手段の一つが、共通の用語を使うことだと考えています。

ただし、「同じ言葉でも人によって思い浮かべる内容が違う」ことがあります。

例えば、後述する「条件分岐」という言葉(というか機能)は、人によって期待する内容が大きく異なるため、リリース内容を発信するときにかなり慎重になった記憶があります。

同じ言葉でも受け取り方が異なる場合、少しの解釈の違いが仕様の齟齬やコミュニケーションのすれ違いにつながる恐れがあると考えています。

そのため、機能開発を進めるにあたり、必要な用語を説明することを行いました。

2. まずは「顧客業務を説明するための用語」

はじめは、顧客の業務を開発メンバーに理解してもらうための用語を定義しました。

夏にリリースした「特定の条件で記録項目の必須/任意を切り替える条件分岐機能」を例に説明します。

「洗浄確認」という記録項目を特定の条件の時に必須入力にする場合の設定画面

このとき、「工程」と「作業」という用語を使って開発メンバーに顧客業務を説明しました。

「工程」と「作業」の関係性の説明に使った図

例えば、「特定の条件下では工程内のある作業が必須になる。それ以外のときは基本的に不要だが、現場判断で作業する場合もあるため任意項目として表示する」といった形で、工程と作業の関係性を整理しました。

なお、これらの用語は、開発チーム内だけでなく、フィールドセールス(以降FS)やカスタマーサクセス(以降CS)などとの会話にも活用しました。 FSやCSに機能の説明をするときに「この機能は顧客業務のこの部分を指しています」と共有できることで、議論の焦点がぶれなくなります。

ただ、これらはあくまでも「業務理解のための用語」であり、「実装のための用語」が欠けていたことに後から気づきました。

3. もう1つの用語の必要性:処理単位の言葉が不足していた

デザインや開発の段階では、機能を実現するために「どの要素をどのように処理するか」を決める必要があります。

今思うと、当初はその粒度での言葉がなかったため、開発チームと認識を揃えづらかったように思います。

例えば、先程の条件分岐で言えば、ユーザーにとっては「この選択肢を選んだら、この記録項目が必須になる」と理解できれば十分です。

ですが、その仕組みを作る側はもっと細かいステップを考える必要があります。

  • ユーザーが実現したいことをどう条件として保持するか
  • ユーザーが入力した値をどう受け取るか
  • 条件をどう判定するか
  • 判定結果をどのように反映させるか(必須化、表示制御など)

上記のような部分の仕様を検討するためには、「値」「処理」「状態」などについて定義した用語があるとコミュニケーションがスムーズで、認識の齟齬も起こりづらかったと考えます。

4. PdMが意識したい2種類の用語

この経験から、PdMとしては少なくとも以下の2つの用語セットを意識しておくことが重要だと感じました。

用語の種類 目的
顧客業務側の用語 営業メンバーとどの顧客業務について話しているのか認識を合わせるため、開発メンバーに顧客業務を理解してもらうため 工程、作業、承認
開発・設計側の用語 開発メンバーと実装内容を正確に議論するため 条件の入力値、条件判定、条件成立時状態など

プロジェクトによっては両者は重なり合うこともあり、2種の用語が不要なこともありますが、どちらの文脈で話しているのかを意識することが必要だと考えています。

6. 用語定義は常に必要とは限らない

もちろん、何でもかんでも用語定義する必要はありません。

例えばtebiki現場分析には、あらかじめ設定した計算式に数値を入力すると計算結果を出す機能がありますが、「計算」という言葉は一般常識の範囲で誰もが同じイメージを持てるため、定義をしなくても困りません。(どういう計算をするかを決めるなら、開発・設計側の用語が必要だと思います)

大切なのは、プロジェクトごとに「定義が必要な言葉」を見極めることだと考えています。

7. まとめ:認識統一の手段は、まだ進化できる

以上が、私がTebikiでPdMとして機能開発を進める中で得た現時点の学びです。

今後、よりよい認識統一の方法が見つかるかもしれませんが「言葉を整理すること自体が、認識を揃える第一歩」ではないかと考えています。

1PdMの試行錯誤が、同じように悩む誰かの参考になれば嬉しいです。

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