エンジニアが展示会に参加して、顧客のことを「わかったつもり」が「ちょっとわかる」になった話

Shun Nihei
tebiki-techblog
Published in
Mar 12, 2024

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私達のチームが開発してきた「tebiki現場分析」を2024年1月下旬に正式にリリースしました。 tebiki現場分析は、製造現場の帳票をデジタル化することでデータの可視化と分析を可能にするプロダクトです。Tebiki社としては、tebiki現場教育 に続く2つ目のプロダクトになります。

tebiki 現場分析

チーム立ち上げ時から携わってきた私にとって人一倍思い入れの強いプロダクトです。「このプロダクトを成功させるためなら何でもやるぞ!そのためにお客様をもっと理解したい」というモチベーションからtebiki現場分析 として初の展示会出展になる「第8回 スマート工場 EXPO SFE 2024」に展示スタッフとして1日お手伝いさせていただきました。本記事ではその感想と学びをご紹介します。

「Tebiki が新しいプロダクト作ったんだ」という宣伝や「Tebikiにはこんな事考えてるエンジニアがいるのね」と知っていただく機会になれば幸いです。

スマート工場 EXPO とは

スマート工場 EXPO は RXJapan が主催する 「Factory Innovation Week」 という展示会の1展です。「スマート工場 EXPO」「ロゴデックス(ロボット開発・活用展)」「製造業カーボンニュートラル展」の3展で構成されます。私がスタッフとして参加した日の来場者数は 約3万人ということからも、非常に大きな展示会といえます。

スマート工場 EXPO では、「製造のデジタル化」がテーマで出展されており、Tebiki社からは「tebiki現場教育」と「tebiki現場分析」の 2プロダクトを出展しました。

どうしてエンジニアが展示会を手伝ったの?

私が参加することになったのは、全社会議にてCEOで「tebiki現場分析として初の展示会、勉強のためにマーケティングチーム以外のメンバーも参加したら良いと思うよー。二瓶とか二瓶とか。」というゆるいノリがきっかけです。

もちろん「ノリと勢い」だけで参加したわけではないです。目的は「お客様や現場に対する解像度を上げること」です。これはTebiki社が大切にしている価値観です。

もともとTebiki社には「現場訪問」というお客様の工場や店舗などに訪問させていただく活動があります。これは全職種が対象で、エンジニアも参加します。この活動では「どんな地域で」「どんな環境(建物、音、匂い)で」「どんな設備を使って」「どんな服装で」「どんな方々が」働かれているのかを直接肌で感じることができます。この経験を通し、お客様の現場のコンテキストや課題を広く深く理解することで価値あるプロダクトづくりにつなげることが狙いです。

今回もお客様とその現場の理解を深めるという目的のもと展示会スタッフとして参加させていただきました。

エンジニア、はじめての営業活動

事前準備

スタッフとしての私の役割は「商談につなげること」です。ブースを足を止めてくださったお客様に「詳しく聞いてみたいな」「試してみたいな」と思っていただくことを目指します。具体的な業務はプロダクトのコンセプトや機能を説明したり、実際にプロダクトのデモをお見せしたり、お客様の課題をヒアリングしたりします。いわゆる営業活動といえます。

そのため事前準備として

  • 足を止めてくださった方への対応
  • プロダクト紹介、デモ時のトークスクリプト
  • ヒアリング事項

これらをマーケティングチームの方にレクチャーしていただきました。私自身営業経験はなく、当日うまく話せるか不安だったので自主練習を重ねて何も見ずスラスラ話せる状態になってから展示会当日に臨みました。

当日の展示会開始前

当日の朝、生でTebiki社のブースを見たときのファーストインプレッションは「青い!デカい!」でした。というのは半分冗談で、「あ、私達のチームで 0 から考えて作ったプロダクトが展示されている、いよいよお披露目されるんだな…」という実感が湧き、ちょっと不思議な気持ちになりました。

Tebiki社 のブース

当日の展示会開催直後

展示会開始直後の10時台の来場者はまばらで、足を止めてくださるお客様はあまりいらっしゃいませんでした。「今日はずっとこんな感じだとまずいな」と思って一時間ぐらい経ったところで、コンパニオン(お客様を呼び込み、説明スタッフにつなぐ役割)の方から「もっと刺さるようなワードとかってありますか?」と問いかけられました。そこでただ足を止めてぼーっとしている場合じゃないなと思い、「こういうのはどうですかね?」とコミュニケーションを取りながら、ご興味を持っていただくべく試行錯誤していました。

いよいよプロダクト説明

いよいよ「説明を聞いてみたいです」というお客様がブースに足を運んでくださりました。よし、練習の成果を発揮するぞ!と意気込んだは良いものの、緊張もあって見事に頭から飛んでいました。最初は拙くわかりづらい説明になってしまいましたが、お客様から「いいね、うちもこういうの困ってるんですよね、こういう事もできるんですか?」などたくさんの質問をいただき、お答えする中で言葉が口に馴染んできて、流暢にご説明ができるようになってきました(練習通り話せたかは定かではないです)。

展示会での営業活動からの学び

プロダクト説明、デモをさせていただく中で、普段の開発業務時では気付けなかった学び、あるいは気づいていたが再認識できたことがたくさんありました。その中の一部をご紹介します。

デモ時の視線誘導とUIの配置

プロダクトデモをする際は、お客様が置いてきぼりにならないよう、どこに注目すべきかを意識しながらお話ししました。デモの操作も、できるだけユーザーとして操作する流れと同じ自然な順番で説明するようにしています。回数を重ねていく中で「ここからここの操作に飛ぶの、視線誘導がすごい不自然になっちゃうな、実際のユーザーもそうなのかな」「このUI、使用頻度が低い割にすごい目に留まる場所にあるな」という違和感をいくつか発見しました。逆に「ここからここまでの操作の流れ、説明してて気持ちいいぐらい鮮やかだな〜」という良い部分も発見できました。

Tebiki社ではデザイナーもスクラムチームの中に入って、一緒にデザインを考えたり作ったりしています。そのためユーザー体験を意識しているという自負がありました。ですが、デモをする中で「あれ、実はこのUIは隠したほうが良いんじゃないか?」「このアクションの場合はサイドに配置するのではなく、直前のアクションの真下に合ったほうが嬉しいのかも?」といった開発のインスピレーションを得ることができたことは、予想外の収穫でした。

勿論、「視線誘導の配置」「デモのしやすさ」がUIの正しい配置を決めるとは思っていません。ただ「開発者」という目線では得られなかった気づきを得ることができたのがとてもいい経験になったと考えています。

お客様の所属部署と課題、共感されるワード

プロダクトが解決したい課題やコンセプトを聞いてたくさんのお客様に「ウンウンそうなんだよね〜」と共感していただけました。チームではプロダクトが作られる前から、Figma のユーザーインタビューや週一回のスプリントレビュー(開発チームとステークホルダーが、一週間の成果をデモして議論する場)など、たくさんの検査と適応を繰り返してきたので、自信は大きかったのですが、生のお客様からのフィードバックでよりプロダクトのポテンシャルを実感できました。

そんな中で 「現場の方」と「DX推進部といった本社の方」とで、いわゆる「刺さるワード」が大きく異なることに気づきました。また、部署は同じでもその方が現場出身なのか、情報システム部としてキャリアをずっと積まれてきた方なのか、などの経歴によっても変わることに気づきました。

営業をされている方としては、「そんなの当たり前だよ」と思われるでしょうし、職種にかかわらず、本文を読まれている方も「だいたい想像つくでしょ」と思われるかもしれませんが、私にとっては「現場の人」「デスクレスワーカー」への解像度がより上がった瞬間でした。

現場DXは、ホントにまだまだ広がってない

私達のチームは tebiki現場分析 の開発に携わってから、市場調査のレポートを読んだり、競合を調査したり、生産管理システムに関する本を読んだり、あらゆる情報にキャッチアップしてきました。また、開発チームであらゆるお客様の課題に対してソリューションを機能に落とし込んできました。次々と機能を開発していく中で、私はどこかなんとなく「課題は解決できた」というような心地がしていました。

ただ、実際に展示会でお客様とお話しする中で、「こんなに素晴らしいものづくりをされている有名企業でも、まだまだ課題を抱えていらっしゃるのか」と思わされることは度々ありました。またお客様から「これまでいろいろサービスは試したけど、結局ウチではうまく活用できなかったんだよね」という話もいただきました。

「便利な機能を備えたプロダクトをリリースしたから課題を解決できる」わけではなく「プロダクトがお客様の手にわたって、上手く活用できたから課題を解決できる」のだなと強く感じました。これまた当たり前かもなのですが、「よし、リリースした、次はどの課題を解くか!」という活動のなかで抜け落ちていってしまっていたなと気づきました。

活用を進めるには Tebiki社がこだわりを持っている「かんたん」「現場にやさしい」といった価値観を大事に、プロダクトづくりを続けていく必要性を感じました。

まとめ

今回の体験で、お客様について自分自身が「わかっていたつもり」であったことがたくさん明らかになりました。

私はエンジニア自身がお客様が解決したい課題領域を正しく捉え、仕様や設計に落とし込んで行くことで変化に強くより価値あるプロダクトを届けられると信じてます。その点、展示会参加は私にとってとても良い経験でした。お客様とお話できるチャンスがあったら、積極的に参加していきたいです。

私たちは仲間を募集しています!

そしてTebiki 社では、エンジニアを募集しております。本記事以外にもお客様を理解するためのドメインモデリングやユーザーモニタリングなど自慢できるプラクティスがまだまだたくさんあります。興味がある方は、ぜひカジュアルにお話しましょう!

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Tebiki株式会社 | Product Engineer |「かんたんデジタル現場帳票 tebiki現場分析 」の開発をしています。また、スクラムマスターとしてプロダクト価値を最大化するチームにするためのプラクティスの提案や対話の促進など、領域を決めずやれることはなんでも取り組んでいます。